【 ペット飼養者が知っておかねばならない法規制 】
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作成者:JHPA代表 作左部 和雄
「動物の保護及び管理に関する法律」が、1999年11月に改正されましたが、その半年後の2000年6月に総理府の調査結果によると、改正されたことを知っていると答えた方はわずか13%、そういう法律があることを知らなかったと答えた方は51%の過半数を占めていました。
ペット販売業者は、正しい知識を身につけお客様の飼育環境に合うペットを勧め、飼養承諾確認をとった上で販売しなければ、モラルの欠如による近隣への迷惑、そして捨て犬・捨て猫もなくなりません。
「動物の保護及び管理に関する法律」に関しては、一部を全国ペット小売業協会発行による「家庭動物販売士」教本から抜粋し、解説しております。
1. 動物の保護及び管理に関する法律に関して
(1)飼養者の「飼い主責任」
ペットを飼うにあたっては、飼おうとするペットについて事前に十分調べ、適正に飼えるかどうかの判断を含めて必要な準備をしなくてはなりません。 世の中にはペットに関する書籍やネットでもたくさんの情報がありますから、まずご自身で勉強してみる必要があります。 こうした準備のないままに、「かわいいから」、「流行であるから」などの一時的な感情や衝動的な動機のみで、十分な知識のないまま安易に飼い始めてしまうことが不適正な飼養や飼養放棄につながっているからです。
ペットは飼い主を選ぶ立場にはありません。ペットはその生涯を飼い主に託すことになります。 だからこそ飼い主は、飼養しているペットに関わるすべてに責任を持たなくてはなりません。 そしてその責任には「動物への責任」と「社会への責任」の2つがあります。
「動物への責任」とは、ペットは命あるものであることを十分に認識し、愛情と責任を持って終生飼養に努めなければならないという責任です。 この終生飼養は、飼い主の責務としてもっとも基本となるべきものです。これを終生飼養の原則といいます。 この大原則を遵守するためには、飼養するペットの生態、習性および生理を理解し、適正に取り扱わなければなりません。
ペットの生態とは、その動物特有の生息場所の選び方、栄養の取り方、有害な自然現象や外敵から身を守る方法、繁殖の仕方などの生活形態全般を指します。
ペットの習性とは、マーキング行動、攻撃性、縄張り、順位付けなどの習慣によってつくられた特性、それぞれの動物に一般的に認められる行動様式のことです。 また、ペットの生理とは、成熟齢、寿命、発情、体温、出産などそれぞれの種の生活現象や生活原理を指しています。 つまり、動物への責任を果たすためには、ただ単に餌と水を与えるだけではいけません。 ペットの生態、生理に合った、しかもその習性が十分に発揮できる環境を整える必要があるのです。
さらに飼い主は、終生飼養の原則を果たすために、住宅環境、家族構成の変化など自分の将来的な生活設計を踏まえ、永続的な飼養の可能性を考慮し、慎重に判断することが大切です。 ですから、ペットの飼養にあたっては、家族の同意があることは最低限の前提です。
「社会への責任」とは、飼っているペットが人の生命、身体、財産へ害を及ぼすことを防ぐとともに、自然環境への影響を防止する責任です。 これは人とペットとの共生社会を実現するためには、とくに重要な責務です。 この責任を果たすために、飼い主は飼っているペットに対して人間社会でともに暮らすうえで必要なしつけや訓練、また繁殖制限など適切な管理を実施することが求められています。
近年のペットブームで、ペット飼養者、飼い主のモラルやマナーは向上していますが、実際にはペット飼養による近隣とのトラブルは、今でも非常に多く発生しています。 そのトラブルの内容は、たとえば庭を荒らされた、排泄物を放置された、抜け毛・羽毛などで迷惑を受けた、鳴き声がうるさいなど多岐にわたっています。 近隣で、一度このようなトラブルが問題化してしまうと、発生源である動物の存在自体を否定するまでにエスカレートしてしまうことにもなりかねません。 そして、こうしたトラブルが近隣との人間関係を損ない、ひいては家庭動物などの虐待につながる可能性があることを理解する必要があります。 モラルやマナーを守った飼養を心がけることは、単に近隣のためではなく、ペットのため、ひいては自分のためにもなるのです。
飼い主が近隣に迷惑を与えないように気を遣っているつもりでも、迷惑を受ける側からすれば配慮が足りないと感じている例も多く、とくに排泄物の放置と悪臭に関しては両者の隔たりが大きくなりがちです。 家庭動物に起因する悪臭の発生源は、主に排泄物とその他の汚物です。 これらは、周辺の生活環境だけでなく、動物へ悪影響を及ぼす心配もあります。 排泄物とその他の汚物を適正に処理するのは飼い主の責任です。 散歩などで動物を外に連れ出す時には、できる限り散歩前に自宅の敷地内で排便させるように、平素からしつけをしておくことが大切です。 もしも、そうしたしつけができていない場合には、その都度、糞を持ち帰ることが飼い主に求められます。 散歩に限らず、庭の飼養施設など、悪臭が近隣に影響を与える可能性がある場合には、悪臭の原因になる排泄物などを定期的に取り除き、清掃する責任もあるのです。
「社会への責任」は排泄物や悪臭の処理だけではありません。 人とペットとの共生社会を実現するためには、鳴き声で近隣に迷惑をかけない、放し飼いにすることで近隣に不安を与えないなどの配慮も必要です。 また、病気や体質などの理由で動物に近づくことが困難な人がいること、アレルギーなどで毛、羽毛などを介して健康被害を受ける可能性がある人がいること、放置された排泄物などが発生源となって他の動物に微生物、衛生害虫、寄生虫などによる健康被害を発生させる可能性があることを十分に理解する必要もあります。 排泄物などを公共の場所に放置した場合には軽犯罪法やその他条例の違反に問われることがあることも知っておくべきでしょう。
「かわいがること」と「愛情」は違うものです。 一時の感情の発露では、愛情とはいえません。ペットを飼養する者として「動物への責任」と「社会への責任」を十分に果たしてはじめて本当の愛情といえるのです。 飼い主責任の遂行、モラルの向上、共生への配慮が社会に行き渡ってはじめて、動物が真の意味で社会に受け入れられるようになるのだということを忘れないようにしましょう。
(2)動物の愛護のための法律知識(現在の所管省庁は環境省)
[1]目的
 ●虐待防止、適正飼養 ……… 動物を愛護する気風の招来、生命尊重、友愛及び平和の情操の酒養
 ●動物の適切な管理 ……… 動物による人の生命、身体及び財産への侵害を防止
飼い主責任の強化として、動物の虐待や遺棄に対する罰則を大幅に強化した規定が盛り込まれています。
[2]基本原則 ……… 人と動物の共生に配慮した適正な取り扱い
 ◆だけは業者だけに適用
 ●動物愛護週間 ……… 9月20日〜9月26日
 ◆動物取扱業者の規則 ……… 都道府県への届出義務、基準の遵守義務
 ●周辺生活環境の保全 ……… 多数の動物飼養により発生している迷惑問題の改善勧告命令
 ●動物による危害の防止の保全 ……… 条例による危険動物の飼養許可規制
 ●飼い主責任の確保 ……… ・動物の健康及び安全の保持(狂犬病接種は義務)
・人の生命・身体・財産への侵害、迷惑防止
・犬猫の引き取り
・動物愛護推進員の委嘱、協議会の組織化
 ●愛護動物のみだりな殺傷、虐待、遺棄の防止
  罰則:・みだりな殺傷
      ・虐待や遺棄
………
………
1年以下の懲役または100万円以下の罰金
50万円以下の罰金
(3)所有の明示についての説明
所有の明示も新たに規定されました。
これは、「狂犬病予防法」ですでに義務規定がある犬のみならず、全ての飼育動物の所有者に課せられた責務です。 方法として、名札・脚環、マイクロチップなどがありますが、この責務についても、生後90日を過ぎたら、飼い主は畜犬登録をしなくてはなりません。
マイクロチップは、直径約2mm×長さ約12mmの小さな円筒形の電子標識器具です。
ガラスのカプセルでできており、その中に集積回路(IC)、コンデンサー、アンテナの役割を果たすコイルなどが収めてあり、ICチップとも呼ばれています。
マイクロチップに標識されているデータは、リーダーという装置を使って読み取ります。 電波を発するリーダーをマイクロチップに近づけると、マイクロチップがその電波に反応して電波を送り返し、これをリーダーが感知してデータを読み取るのです。 マイクロチップ自体は電源を必要としないため、電池の交換などは不要で、一度動物の体内に注入すれば一生交換する必要はありません。 所有を明示する方法としては現時点ではもっとも優れています。 マイクロチップは動物病院で獣医師に注入してもらいます。 注入の方法は、一般的な皮下注射とほとんど変わりませんから、動物には負担をかけません。 また、安全性が確認され、動物用医療用具として薬事法で認可されたもののみ市販されています。
(4)繁殖制限に関する知識
飼育動物の数が増えても、適切な環境で終生にわたって飼養が可能であるか、自らの責任で確実に譲渡ができる場合に限って繁殖が認められています。 それ以外の場合は、原則として避妊手術、去勢手術、雌雄の分別飼育などで、繁殖を制限する義務があるとしています。 こうした情報に加えて、自治体によっては避妊去勢の手術費を助成する制度を設けている場合があるので、そうした情報も説明に加えることが大切です。
(5)人と動物の共通感染症の予防に必要な知識
動物から人へ、人から動物へと病原体が感染すること、またはその感染によって起こる疾病のことを「人と動物の共通感染症」といいます。 厚生労働省では、動物から人へ感染する疾病を「動物由来感染症」と呼んでいます。 また「人畜共通感染症」「人獣共通感染症」「ズーノーシス」などと呼ばれることもあります。
人と動物の共通感染症は、現在、約150種の疾病が知られていますが、そのうち日本国内では数十から100種類くらいの感染症があるといわれています。 人と動物の共通感染症の多くは手洗いの励行などといった日頃の注意で防ぐことができるので、必要以上に怖がることはありません。 予防方法は飼養場所を清潔にし、飼養動物を他の動物(飼養動物、野生動物、昆虫類)と接触させないようにすることが大切であり、混合ワクチンの接種により予防可能なものもありますから、必ず予防接種をしておくことです。
飼養者は、餌の口移し、一緒の就寝など飼養動物との過度の接触を避けるようにしましょう。
(6)狂犬病予防法に関する知識
狂犬病は日本、オーストラリア、英国、ノルウェー、スウェーデンなどの一部の国を除くほぼ世界中で発生しています。
アジアやアフリカ大陸では、毎年3万人ほどの死亡が報告されています。日本では、1956年(昭和31年)の発生を最後に姿を消しています。 これはこの法律に基づく官民一体になった成果ですが、世界的に見て今なお非常に危険性が高い人畜共通感染症であり、発症した場合の死亡率は100%と最も怖いものです。 わが国では予防体制を万全にしておかねばなりません。この予防注射は毎年一度の実施が義務づけられています。 その時期は4月1日から5月30日の間に受けることとされています。 但し、生後91日以上の犬を飼った場合、飼った日から30日以内に最初の接種をし、以後は前記の間に接種することになります。
厚生労働省が発表している予防注射率は、2003年でも75.5%であり、まだその義務を果たしていない方も25%もいることは残念なことです。
2. 身体障害者補助犬法
犬の持てる能力を人間の福祉、特に、身体に障害を持つ人たちの福祉に役立てるものとして開発されたものが「盲導犬」「聴導犬」「介助犬」などです。
障害者を補助するための犬の育成と、その犬を使用する障害者が、犬を伴って施設等を利用する場合の円滑化を図ることによって、障害者の自立及び社会参加を促進しようとする目的です。
補助犬は、障害者一人ひとりに適応するものとされることから、その障害者のために特別に訓練された補助犬である旨を明らかにするための表示をしなければならないこととなっています。
●公共交通機関における補助犬の同伴
これは、障害者の外出、移動をサポートするためのもので、電車、バス、タクシー、航空機等の公共交通事業者等は、その管理する旅客施設、運送事業に供する車両を障害者が利用する場合に、補助犬の同伴を拒んではいけません。
●不特定多数の者が利用する施設における補助犬の同伴
会館、デパート、ホテル、レストラン等、多くの人びとが出入りする施設も多くあります。 不特定多数の者が利用する施設を管理する者は、当該施設を障害者が利用する場合に補助犬の同伴を拒んではならないこととされました。
ただしこの規定は、施設や、その利用者に著しい損害が発生したり、そのおそれがありやむを得ない場合は適用が除かれます。
●民間における補助犬の同伴
民間の事業主や住宅の管理者は、その事業所、事務所で障害者が勤務する場合、あるいは住宅に居住する場合、補助犬の同伴を拒まないよう努めることされ、努力目標となっています。
3. 海外からペットを連れ帰る時の法規制
2003年6月から、海外からペットの犬や猫を連れてきても、一緒に帰宅できない人が続出するかもしれません。
政府が狂犬病防止策を強化した結果、海外から日本に来る犬や猫にはマイクロチップを埋め込むことが義務化されるためです。 条件を満たさない犬や猫は帰国後、飼い主から離され、最長180日間の「係留検査」を受ける可能性があります。
従来の制度では海外で狂犬病の予防接種を1回済ませれば日本国内に連れ帰ることができました。
新制度では、まず個体識別用のマイクロチップを埋め込まなくてはなりません。
予防接種が2回になるうえ、日本政府が指定する動物病院で狂犬病に対する抗体の有無を確認することが義務化されました。 これらの条件をクリアしないと、日本到着後、全国11力所の「係留施設」で最長180日間、狂犬病が発症しないかどうか検査を受けるとされています。 「発生がない」と日本政府が認めた英国や豪州など13カ国・地域を除く大半の国を対象として、このような措置がとられます。
ただ、マイクロチップは中国やロシアなどでは入手が難しい状況にあります。
指定病院は米国でも1カ所だけで、病院がない国も多いのです。 海外に住む日本人から外務省に「これではペットを連れて帰れない」などの苦情や質問が相次いで寄せられています。
外務省は、動物の検疫を担当する農水省に対して「住んでいる国によっては実行が極めて困難。 配慮が必要だ」として、完全実施の延期を要請しました。しかし、農水省は「先進国で日本の検疫は緩やかな方だ」(同省幹部)と反論。 調整の結果、問題があれば秋にも制度を見直すことになりました。
一体行政は何を考えているのでしょうかね。
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