【 21世紀のペットビジネス最前線 Part.2 】
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作成者:JHPA代表 作左部 和雄
相変わらずペットビジネスは右肩上がりで成長を続けている。
2年前にパート1をまとめたが、その後の変化を各種データから再度検証してみた。
ペット産業の実態を示すデータは様々な機関で色々な切り口で発表しているものの、出所機関によってバラツキが大きく、どれが真実なのか、なかなか判らないのが現状である。
そこで前回同様に日本ペットショップ協会(ジャペット)に依頼し、色々な角度から再度検証していただいた。
2年前に公開したデータも一部修正を加えている。
1. 小売ベースの市場規模はどれくらいか?
2年前の予測では、2000年で約1.5兆円、年率5%の成長で2005年には1.9兆円と予 測した。これを下記データに基づいて2000年の市場規模を再試算してみたとこ ろ、1兆4,620億円となった。矢野研データに医療など加算されていない分野を加 えると、固めの値と思われ、2年前に試算した1.5兆円とほぼ同じ値になった。
日本リサーチセンター ……………… 2000年は1.2兆円

矢野経済研究所 ………………………… 2000年は9,100億円

 (前年比105.8%。医療、葬儀葬祭、保険、シッター、書籍関連、ドッグラン・スパなどを含まず)

エコートレーディング(ペットフードや用品の卸業者) … 2000年の売上げ構成比
 フード:55.4% 用品:25.7 生体:14.5% ホテル・トリミングなど:4.5%
  ★上記矢野研に適用するなら、フード5,041億、用品2,339億、生体1,320億

農林水産省 …………………………… 1999年のフードメーカーや商社から卸売り業者への販売高
 2,410億円(前年比104.9%、国内品構成比42%、犬猫フード構成比95%)
  ★小売ベース推定では、約5,500億(ジャペット推定)

某マーケッティング会社推定 ……… 2003年の下記3つでの市場規模1.2兆円
 フード6,000億、医療5,000億、生体1,000億

ペットフード工業会 ………………… 2004年の犬飼育頭数1,246万頭(2000年比124%)
 2004年の猫飼育頭数1,164万頭(2000年比151%)

ペットフード工業会 ………………… 2004年の飼育世帯率 犬18.8% 猫15.1%

JKC登録頭数 ………………………… 2004年56.2万頭(前年比97.5%、2000年比125%)
2000年は1兆4,620億円 ……… ( )内は構成比

●フード5,700億(39%)  ●用品2,500億(17%)  ●生体1,300億(9%)

●医療 4,700億(32%)  ●他サービス420億(3%)
2000年を試算し直したところで、その後の市場規模を推定してみた。
固めに見て、2003年までは年率4%、以降3%と推定した。
結果、昨年2004年は1.7兆円、2010年には2兆円を超えると思われる。

最近の傾向として、フードの高価格帯と低価格帯の二極化進行、ファッションなどの衣類用品増加、トリミング・ホテル・シッター・ドッグカフェなどサービス業の拡大、 一方でJKCに見る登録頭数の前年比割れ、拡大を続けてきたペット関連業者数が、2005年1月時点で2.4万企業(野生社調べ)と、始めて前年比割れ(98.5%)を示すなど、成長に陰りが見えてきたのも見逃せない。
2. ペット関連業者数の変化を見て
●2005年1月のペット関連業者数(出典:野生社 *企業実数以外は延べ数)
・企業実数* 23,948(前年比▲1.5%)
・小売 12,678(前年比▲2.7%) ……… 犬猫生体取扱 5,859(前年比▲2.8%)
犬猫用品取扱 8,962(前年比▲2.9%)
・卸売 2,265(前年比▲1.8%)
・サービス 13,978(前年比▲0.3%) ……… トリミング、犬訓練、葬祭はダウン。
診療、ホテル、シッター、学校、テーマパークがアップ
・養殖・繁殖 2,433(前年比▲0.9%)
・製造 1,096(前年比 1.2%)
毎年増え続けてきたが、始めて前年比割れとなった。製造だけが増えているが、これは他分野からペット業界への参入組みが増えているためである。 それ以外は、どの業態でも減少しており、小売業の減少が特に大きい。 サービス業が最も企業数が多いが、これとてダウンに転じ、トリミングや犬訓練も飽和状態に達した感がある。
バブルがはじけても右肩上がりで成長を続けてきたペット業界であるが、
市場規模の成長以上に企業数が増え、例外に漏れず過当競争時代に入ったようである。
最近のペットショップを見るなら、生体やフード・用品では食べていけず、トリミング・ホテルでカバーしていると聞く。 それとて過当競争に入っている訳であり、あちこちで倒産の声が聞かれるようになった。
今後は、他業界と同様、お客様のニーズを把握し差別化メニューの開発に努力し、満足度の向上に心血を注いでいる所だけが勝ち組となろう。
3. 犬猫市場
フードを見ても全体の95%が犬猫であり、用品、医療、サービスの大半が犬猫である。 また、生体も犬猫が7割程度を占めていると思われる。従ってこれらから、「90%超」が犬猫と思われる。 全体をご理解いただいた所で、ペットの主流をなしている犬猫にスポットをあてて見てみよう。
犬猫の推定飼育頭数
犬の登録頭数(出典:JKC、単位千頭)
2002年まで横バイであったが、以降の伸び率が大きい。 飼育世帯率で見るなら、下記の値であり、犬猫いずれかを飼っている世帯は30%程度と思われる。

 2000年   2004年 
    犬  18.1% 18.8%
    猫  11.6% 15.1%
犬の室内飼いは、2人以上の世帯で60%、猫は72%になる。
2004年、米国の飼育世帯率は犬、39%、猫34%と日本の2倍強である。
この比較だけからしても日本の場合、まだまだ増え続けると予測される。
2004年、フード普及率を推定するなら犬で50%、猫で75%程度に到達したと思われる。
犬の登録頭数(出典:JKC 単位:千頭)
 1999年   2000年   2001年   2002年   2003年   2004年 
 合計  424 448 478 524 576 562
 1位  ダックス ダックス ダックス ダックス ダックス ダックス
 2位  シーズー シーズー チワワ チワワ チワワ チワワ
 3位  ゴールデン チワワ シーズー コーギー プードル プードル
JKC登録とは、ブリーダー段階で、純血種の出産で、販売するか繁殖用に残す場合に登録するものが大半である。 国内に、20前後の登録団体があるが、JKCのシェアを80%と推定するなら2004年 703千頭となる。
一方、2002年のペットフード工業会にて、アンケートをとったところ、7,253頭の内、純血種 を飼っている方が、58%、雑種42%であった。 仮にこの値を上記、703千頭にあてはめるなら、121万頭が年間の販売頭数になる。 犬の飼育頭数や平均寿命から単純計算するなら、年間100万頭から120万頭が死亡して、同程度の犬が新たに飼われていると推定される。
犬の平均寿命は、犬11.9歳、猫9.9歳となり、12年前より犬で3.3歳、猫で4.8歳長生きしている。 ペットフードの普及やワクチン接種の普及が要因である。 犬の場合、雑種が13.3歳と長生きしている(出展:東京農工大------2005年1月12日付け、読売新聞から)。
JKC登録を見ても、小型犬主流になっており、大型犬は1999年にゴールデンが3位であったが、2004年では15位である(大型犬はラブラドールの9位がトップ)。
一方、2004年の米国を見るなら、1位:ラブラドール、2位:ゴールデン、3位:シェパードの順位である。国土事情の違いから来るものであろう。
4. 各種アンケートに学ぶ
●ペットに掛けている年間費用(2003年総務省)
・ペットフード:5,823円
・用品・各種サービス・医療費:8,409円
合計:14,232円
犬の寿命12年として、生涯コストは
      171,000円
ペット飼育の好き嫌い 集合住宅におけるペットの飼育
ペットを飼わない理由 ペットを飼育している理由 ペット飼育による迷惑
これらのアンケートの結果は、細かいコメントは割愛するが、高齢化、核家族化が進展する中で、ペットに対する期待値が益々拡大することを意味している。
ペットをコンパニオンアニマルと捉える方よりも、今や家族の一員として捉える方が大多数である。 故にまた、そこにランニングビジネスとして大きな市場が開けているのである。
但し、一部、モラルの不足している方々もいるのが残念なことであり、ペット普及を妨げる一要因にもなっている。

ペット販売時点からのペット販売業者による適切な指導、法規制の強化などを進めながら、社会全体が厳しく監視しあう方向に持って行かなければならない。
5. 考察
今後もペット業界は、着実に成長を続けるであろう。
その成長率は、過去のように大きくないものの、ここ数年3%前後の成長を続け、
2010年には2兆円に到達すると思われる。
そのパイ以上に、他業界からの参入組みも目立ちペット関連業者数が増え続けてきた。
その結果、2005年1月時点では、2万4000社と始めて前年を下回った。
この業界は、法人組織よりも個人事業主が多いのが特長であるが、故にまた、経営基盤の脆弱な所が多い。
今後は、他業界と同様、競争の激化、淘汰の時代に突入すると思われる。
そんな中でも、成長を続けている業態は、シッター、ペットホテルなどのサービス業である。 これは、高齢化と余暇の過ごし方を考えれば理解できよう。今後は、家族であるペットと同伴できる、ホテル、レストラン、レジャー施設が増えることも想像に難くない。
また、家族ゆえに食事、洋服を始めとした用品、きれいにしたいからとシャンプー・トリミング、医療、保険などの分野も成長するであろう。 ペット病院はまだ増え続けているが、すでに飽和状態にあり、今後はペットホテル、トリミングなどとの複合型傾向も顕著になるであろう。
さて、そんな中で、差別化、生き残りのキーワードを考えてみたい。
2004年末に総務省調査によるインターネット利用者は約8,000万人、ブロードバンド利用者は62%である。 これは2000年の子供まで含めた全人口に対する普及率である。
一方、ペット関連業者のヤフーへの独自ホームページ登録数は、約1,800であり、2,4000業者数の8%に過ぎない。 ヤフーに登録しない所を加えても、推定するなら20%未満であろう。これらから、最初のキーワードは次のように考える。
(1)ネット活用
経営ツールとして当たり前の様に使い切る、勿論、どんな目的に活用するかが先にあるが。
例えば、フード・用品はネット販売が当たり前になってきた。重い荷物を買ってくるよりも、ネットならどんなに便利なことか。
同様に、生体とてネット販売が急速に進展している。一部にネット販売を批判する声があるが、販売方法が悪いのでなく一部の「販売者」が悪いのである。 これは、店頭販売とて同じことである。 むしろ、ペット感染確立の高さ、社会化期問題、ケージ販売によるストレスなどを考えたら、ブリーダー直譲型が理想であり手段としてネットがあるに過ぎない。 販売時点で、購入者に対するきちんとした指導、アフターフォローなどはネット販売でも確立されている。 世の中の流れに眼をそむけないで欲しいものである。今後は、動画が当たり前のように普及し、まさに距離を問わず対面販売の方向に進むであろう。
更にキーワードとして
(2)顧客情報管理
ペット販売時点からの情報の管理が、顧客満足度を高め、ランニングビジネスを決める。
(3)ブリーダーの1,1,6管理
今後も犬猫が主流の業界である。その中にあって、ビジネスの最初の出発点がブリーダー業である。 いたずらに利益優先の増殖家に走ると供給過剰となり、悲惨な結果になる。 イギリスのように、初産は生後1年後、出産間隔は1年に1回、最高6回までとすべきである。つまり、計画出産を目指すべきである。
これを達成できれば、自ずと予約をいただいての交配となり、2回目ワクチン接種後の100日販売も可能になるはずである。 飼養者のことを考えるなら、これがベストと判っていながら前進できない。何かがおかしい。早く欧米並みになりたいものである。
(4)捨て犬・捨て猫撲滅
犬猫飼育世帯率の向上は、ペット業界としては喜ばしいことであるが、一方で捨て犬・捨て猫を産み出すことにもなりかねない。 それを発生させないために、産まれる前の対策(前述1,1,6管理)、販売時点の適切な指導と飼養承諾確認、販売後の里親探しネットワークなどを日本社会全体で取り組むべき時である。
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