【 21世紀のペットビジネス Part.1 】
2003年2月
| 前のページにもどる |
作成者:JHPA代表 作左部 和雄
  最近のテレビ、新聞、雑誌などでペットの話題が出ない日はまずないと言っていいだろう。 ペットをテーマにしたものは確実な視聴率を稼げるようで、ペコハウス編集部にも各テレビ制作部門から相談が寄せられることが多い。
  さて、今回はペット産業を取りまく環境について、さまざまな角度から検証してみたい。 ペット産業に携わる人にはもちろん、ペット愛好家の方々にも、ぜひとも参考してもらいたい。
  まず、最初にペットの需要が増えたことにより、どのような社会的ニーズが変化したのかを考えてみよう。 例えば最近では、集合住宅も戸建てもペットとの共生環境を考えたものの方がはるかに売れ行きが良いという報告がある。 また、身体障害者補助犬法が施行され、公共交通機関での受入れやホテル・デパートなどの施設でも同伴が許されるようになった。 そうしたペットとの共生という環境づくりは今後確実に充実していくことだろう。旅館やホテルもペット同伴可というタイプのものが増えている。 やがて、引越も旅行もペットと同伴が当たり前という時代がそう遠からずやって来るに違いない。
  昨年度の国民生活白書によると、ペットを家族の一員とみなす人の割合は64%でその傾向は年々高まっている。 ペットを飼う理由は「動物好き、57%」「気持ちが和らぐ、46%」となっており、いずれも10前の2倍近い値だ。 これも少子高齢化、核家族化、余暇の充実など社会環境の変化がもたらした値だといえるのではないだろうか。
  次にペット産業を数字で見てみよう。 ペット関連ビジネスに対する分析は、様々な調査機関が発表しているが、必ずしも正確にしかもトレンドで示しているとは言い難い。 そこでブリーダーから販売店、エンドユーザーまで、ペット産業全体に詳しい日本ペットショップ協会に様々な調査機関のデータから推定してもらった。 それによると、その市場規模は2000年で約1.5兆円、2005年まで5%ずつ成長し、1.9兆円になる可能性が高いという。 この値は一般のお客さんがペット業者に支払う金額だ。この予測に基づけば、21世紀はペットビジネス最盛期となると言っていい。 では、2000年のペット産業に関する特長を挙げて見よう。
表1
2003年2月・日本ペットショップ協会調べ
犬猫の分野は、ランニングビジネスが最も成長する可能性が大だ。
あいつぐ他業種からの参入
  3年前に小売業界(スーパー・デパート)から参入した企業の経営者が語った参入理由を紹介しよう。
1、 ペット産業はバブルがはじけても右肩上がりで成長を続けている
2、 この業界の経営者の考え方は他業界に比べて遅れており、そこにビジネスチャンスがゴロゴロ転がっているだから、 他業種の我々でもペット業界のリーダーになれるのではないかと考えたという。 確かに業界として見た時に、全国に1万店を越えるペットショップがあるのに、それをまとめるメーカーも問屋もない。 このまとめ役の全国小売業協会ができたのも一昨年の4月のことである。 またメーカーの数が多すぎて業界リーダーが見えない、大手の問屋は3店あるが、売上げ規模で均衡しておりどこもリーダーと特定できないなど、 他業界に比べて成熟しているとは言えない点も多く見受けられる。
  そのことを多くの小売業界の経営者も感じ取ったのか、その後、小売業界大手から相次いで新規参入があった。 今後もこの傾向が続き、ペット産業の健全な競争と進化を促すことを期待したい。
これからはペットビジネスも生き残りが熾烈に
  21世紀のペットビジネスは、成長を続けることには疑いはないだろう。 ただし、すべてのショップ、獣医、トリミング店が成長できるかといえばそれはNOだろう。現実に多くのショップが出来ては消えを繰り返している。 成長ビジネスゆえに競争も激化しているからだ。常に他との差別化を考え、先んじた方が勝つのは、ペットビジネスでも変わらない。 顧客の満足度をいかに高めるかを常に考える姿勢が大事だと言える。
  では次に、今年1月にペットショップに対して実施したアンケートの中から、注目したいポイントをご紹介しよう。
表2
2003年2月・日本ペットショップ協会調べ
  これを見て皆さんはどう考えるだろうか?
  興味深いことにインターネットの普及率が60%を超えようとしている現代において、 それを活用しているペット業者は16%しかいない。これは他の業界に比して、かなり少ない数字といえよう。 もし、顧客の満足度を高める差別化を考えるならば、ここらへんに大きなヒントやポイントが隠れているのではないだろうか。
  最後に、顧客満足度を高めるのは大切だが、 ペットビジネスゆえにそれが弊害を生んでしまう点についても触れておきたい。それはペットを流行で買う顧客にどう対応するかだ。 かつてはハスキー犬、現在ではチワワと言ったようにその時々の流行にペットの需要は大きく変化する。 顧客のニーズ優先で正しい飼育知識を持たない顧客に売った結果、ペットを虐待したり、捨てたりする例が急増する。 やはり、生き物を商品として扱う特別な業界であることをきちんと考えた対応を期待したい。 お客様に対するアドバイスや指導を大切にすることも一つの大きな差別化につながると思う。〈了〉
Copyright(c)2005 JAPAN HUMAN & PET ASSOCIATION. All Rights Reserved.